相続税の税務調査を納税者が受けるにあったて、その法的根拠をまず初めにご紹介をします。法律の条文を下記に紹介していますので、読み飛ばしたい方は、読み飛ばしてください。
下記の条文は、相続税の納税義務者が相続税の税務調査を受けるべき根拠となる法律です。課税庁が税務調査を行う根拠法ですが、下記に定められている以上のことは、してはならない制限法ともいえなくもありません。
例えば、被相続人から相続をしていない法定相続人以外の相続人と一緒に生活している親族は、相続税の納税義務者ではないので、質問検査の対象とはなりません。しかし、被相続人がお金を預ける金融機関、生命保険会社等は、その調書を税務署に提出しますので、その対象となっています。
また、「相続税の調査について必要があるとき」の「調査の必要性」の解釈は、税務署長の裁量にゆだねられているので、納税者側は「調査の必要性」はないと、合理的に判断して、主張しても、中止されることは、通常はありません。税務調査は、犯罪捜査などの強制的なものでなく、任意調査と分類されますが、調査拒否には罰則が課される間接強制調査ともいわれているものです。
下記の条文では、実地調査の場合は、事前通知があり、納税者は税務調査の存在を知ることができますが、それ以外の質問検査権の行使については、いつ開始したかは、納税者は知る由がありません。
事前通知では、調査の日時、場所については、税務署が通知してきた日時、場所については、合理的な理由を付して変更するよう求めることができます。例えば、場所については、個別事情により異なりますが、被相続人の自宅でなく、相続人の居宅や事務所で行うこともできます。日程の変更も、急に病気の検査入院が入り、変更を願い出るケースもあります。
なお、税務代理人である税理士は、納税者に代わって、税務調査の論点ないし争点について、主張、陳述、反論等をいたしますので、税務調査にも立ち会います。また、相続税の申告の税務代理をおこなっている場合には、税務調査で問題となりそうなところを事前に洗い出し致します。この場合は、相続人の皆様のご協力を前提としております。いずれにしても、税務調査の権限行使は、税務署長の裁量に基づいて行われる訳ですので、納税者としては、どのように税務調査が行われるのかを知っておかなければなりません。
参考:「国税通則法第74条の3
(当該職員の相続税等に関する調査等に係る質問検査権)
第74条の3 国税庁等の当該職員は、相続税若しくは贈与税に関する調査若しくは相続税若しくは贈与税の徴収又は地価税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査又は徴収の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、第1号イに掲げる者の財産の財産若しくは(地価税関係略。)に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることが、できる。
1 相続税若しくは贈与税に関する調査又は相続税若しくは贈与税の徴収次に掲げる者
- イ 相続税法の規定による相続税又は贈与税の納税義務のある者又は納税義務があると
- 認められる者(以下「納税義務者がある者等」という。)
- ロ 相続税法第59条(調書の提出)に規定する調書を提出した者又はその調書を
- 提出する義務があると認められる者
- ハ 納税義務者がある者等に対し、債権若しくは債務を有していたと認められる者
- 又は債権若しくは債務を有すると認められる者
- ニ 納税義務者がある者等が株主若しくは出資者であつたと認められる法人又は
- 株主若しくは出資者であると認められる者
- ホ 納税義務者がある者等に対し、財産を譲渡したと認められる者又は財産を
- 譲渡する義務があると認められる者
- へ 納税義務者がある者等から、財産を譲り受けたと認められる者又は財産を
- 譲り受ける権利があると認められる者
- ト 納税義務者がある者等の財産を保管したと認められる者又はその財産を
- 保管すると認められる者
- 1 質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を
- 開始する日時
- 2 調査を行う場所
- 3 調査の目的
- 4 調査の対象となる税目
- 5 調査の対象となる期間
- 6 調査の対象となる帳簿書類その他の物件
- 7 その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項