(吉野画伯 提供)
遺言でなく遺産分割協議による選択
質問:
父が亡くなり、遺言書がありますが、その内容に従うよりも、相続人間で遺産分割協議をしたい場合には、どのような手続きをとればよいですか。
回答:
その遺言書が、包括遺贈の遺言書であれば、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に包括遺贈の放棄を家庭裁判所に申立をします(民915)。しかし、その遺言書が、特定遺贈の遺言書であれば、受遺者は遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄ができまし(民986)、放棄の意思表示を遺贈義務者等に通知すれば、遺贈の放棄の効力が発生します。その遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時までさかのぼりますので、受遺者が放棄した財産は、遺産分割の対象となります。そのため、相続人が遺言ではなく、遺産分割協議を選択する場合には、遺贈の放棄をすることで遺産分割協議ができます。
遺産分割協議では、各相続人の相続分の割合に応じて遺産を相続します。各相続人の相続分の基準となるものが法定相続分(民900、901)です。共同相続人のなかに、被相続人から遺贈を受けて(遺贈の放棄をしていない場合。)いる場合には、相続人の法定相続分から遺贈の価額を控除した残額をその相続人の相続分とする。すなわち、遺産分割協議では、各相続人の相続分から遺贈価額等の特別受益額を控除した額が相続分となります。
結論として、遺言書がある場合に、遺産分割協議を選択する場合には、遺言の放棄をすれば、遺産分割協議ができます。